2010年04月12日公開|トヨタ
大変リスクの大きなご依頼を頂きました。
県外のスタンドさんでお客様のお車を洗車して傷が入ったとのことでクレームになったお車です。
お車は今年の2月に納車になったばかりの新車だそうで、手洗いで洗車をされたそうですが傷がついたとのクレームになり、地元のトヨタディーラーに補修依頼をされ施行をしていただいたそうですが、これが又クレームとなりお客様にご納得をいただけなかったそうです。
このような経過の中で車磨き研究所にお問い合わせいただきお引き受けすることとなりました。
引取りに現地にうかがいお車を拝見させていただきましたが、あいにく当日は雨で傷の状態は確認しずらかったのですが、それでもかなりの量の線傷とポリッシャー傷が確認できました。
今回補修依頼されたトヨタディーラーからは半日で戻ってきて8万円の請求をされたそうですが、直ったどころかよりひどい傷がついてしまっていたそうです。
きちんと仮に補修が出来ていたとしても半日の施行で8万円を取れる根拠自体がわかりませんほとんど詐欺といえます、もっとも半日でヴェルファイアや202でなくとも磨いて傷を取ることなど魔法でも使わない限り不可能です。
更に追い討ちをかけるのは、ガラスのコーティングまで施行してあるとのことだそうです。
8万円の施行価格をバラしてみると、1日のブース使用料が5.000円、トヨタの使用するコンパウンドやコーティング剤の原価が5.000円、引き取り納車料が5.000円、施行人件費が15.000円、トヨタの利益が4割で20.000円、合計50.000円にしかなりえません、これでも一日施行と換算しての料金ですから実質は半分の25.000円となりますから残りの55.000円はどこに行ったのでしょうか?
仮に半日でまともな施行ができていたとしても、いくらクレーム対応のリスクの大きい緊急対応で保険扱いだとしても、足元を見たボッタクリ価格です!
それでは半日の施行時間をバラして見ます。
洗車で30分、マスキングで1時間、新車時のガラスコーティングを溶剤を使用して剥離したとしても1時間、溶剤を落とす為の洗車で30分、再度磨きのためのマスキングで1時間、磨きで1回のみのバフ掛けで1パネル15分の施行で2時間30分、コンパウンドの脱脂等で1時間、コーティングで2時間、合計9時間30分となります。
半日は4時間ですから5時間30分も時間があってきません。
そもそもトヨタが受けた施行依頼の内容で9時間30分ですら施行を行うことは神様でもない限りありえないことです。
如何にトヨタディラーがでたらめなことをしていたかは価格や時間を見ても明白です。
どんなに優れた設備や技術を持った専門業者がこの依頼を施行するには、朝から晩までかかりっきりで施行しても3日は間違いなくかかります。
今までも何回かトヨタやディーラーのブランドを鼻にかけたお客を馬鹿にしきった対応を批判してきましたが、この問題は次元が違います。
この施行を行ったトヨタディーラーは今まで見たり聞いてきた中で飛びぬけて最悪です。
正直当事者でない私でも腹が立ってきます。
磨き前膜厚は115μです。
これがトヨタで補修を半日でおこなったという塗装の状態です。
この傷はいつついたものかは判りませんが、少なくともスタンドの1回の手洗い洗車でつく傷のレベルではないことだけは確かです。
50cm四方でおそらく少なく見ても1000本以上の線傷とポリッシャー傷が全面くまなく入っています。
線傷に関してはこの段回では新車納車前にあった傷が残っているものか、オーナー様が使用の過程で着いたものか、スタンドの洗車でついたものかの判断はつきません。
ポリッシャ傷に関してはスタンドではポリッシャーをかけてはいないので、トヨタディラーでの新車納車時のコーティングでついたものか、今回の補修施行でついたものかであることは確実です。どっちにしてもトヨタディラーがつけた傷であることに変わりはありません。
トヨタディラーでの補修施行でガラスコーティングを施行してあるとのことでしたので、まずガラスコーティングをウールバフで剥離する作業に入りました。
通常ガラスコーティングをバフを使用して剥離していくと砕けたガラス膜の粉がバフにキラキラとついてきます、しかしいくらバフを掛けていっても剥離されたコーティングはでてきません。
それどころかバフには黒くコンパウンドの色がついてくるのです。
黒い色のコンパウンドは私が知る限りでは黒系色の傷を隠すための隠蔽用コンパウンドです。
仮にガラスコーティングが施工してあったとしても、なぜコーティングの下にコンパウンドがあるのか?
ガラスコーティング剤はコンパウンドの油脂が下にある場合は製膜すること自体ができなかったり、製膜できたとしても下地と密着することは出来ません。
この現象を冷静に分析すると、いくつかの可能性が見えてきます。
1:ガラスコーティング自体が施行はされずに傷隠しのコンパウンドを掛けただけ。
2:脱脂を行うと傷が出てきてしまうので脱脂をせずにガラスコーティングを施行した為すぐに剥離をしてしまいすでにコーティング膜がなくなっていた。
この2通りの可能性しか考えられません。
どっちにしようが最悪のことです。
更に施行がすすみウールバフを1回掻け終えてみると、上の写真の数倍の傷が出てきてしまいました。
当然車磨き研究所でウールバフによるポリッシャー傷もついていますが、バフ径の違うポリッシャー傷がこれでもかと出現してきました、更に線傷も新たに出現してきました。
ここで新たな疑問が生じてきます。
ポリッシャー傷はこれで3回施行をしているのでとりきれなかった過去2回と今回の傷があるのはわかりますが、問題は線傷です。
新車納車の段階でトヨタディーラーでガラスコーティングを施行されているとのことでしたので、多少の取り残しの線傷は仕方ないとしてもなぜこれほどの無数の線傷がガラスコーティングの下にあるのでしょうか?
ガラスコーティングが施行されていたのならば、今回スタンドでの洗車で傷が入ったとしてもクレームになるようなレベルで傷をつけるには、洗車クロスに砂でもかまして洗うくらいのことをしないとつかないレベルの傷の量と深さです。
このことについてもいくつかの推論が生まれてきます。
1:新車納車時に傷を隠してガラスコーティングを施行し使用している過程でコーティングは剥離を起こしていて、洗車や雨により傷隠しコンパウンドが取れてしまいはじめにあった傷プラス使用過程でつけてしまった傷によりこのような状態となった。
2:新車納車時にはじめからガラスコーティングは施行されておらず傷隠しだけがされていて、洗車や雨により傷隠しコンパウンドが取れてしまいはじめにあった傷プラス使用過程でつけてしまった傷によりこのような状態となった。
10日間いろいろ考えては見たもののこの2パターン以外には考えられませんでした。
更に施行を進めていくとトラブルを発見してしまいました。
ドアパネルの樹脂パーツのドアパネルとの接続部分付近が2箇所数ミリではありますが塗装が剥離していました。
ヴェルファイアはドアパネルの下側三分の一が樹脂製の部品を使用しておりドアパネルとの接続部分にゴムパッキンを使用しています。
このゴムパッキンにブラックコンパウンドが全面に塗りこまれていました、つまりこのゴムパッキンはマスキングされておらずトヨタディラーでの2回の施行の中で起きた塗装剥離と思われます。
これ以外にもいくつかの可能性は考えられますがかなり可能性は低いことです。
1:車磨き研究所でのウールバフ掛けの際に剥離させた。
2:飛び石により使用過程中に起きた。
3:塗装の密着が甘くマスキングをはがす際に糊の力で剥離した。
おのおの可能性を考えて見ます。
1:この部分は磨きが終了するまでマスキングが張られている為マスキングが取れていたのでなければ剥離は起こらない。
実際マスキングは正常な状態でした。
2:無いとは言い切れないですが場所的には飛び石による事故は起こりにくい。
3:はがしたマスキングを確認できてはいないので断定は出来ませんがトヨタディーラーでの磨きの際に熱が入り塗装の浮き上がりを起こしていたとすると可能性はある。
一番可能性があるのはディラー施工中に起きたことか、3番の理由によることだと思います。
このような問題があれどもとにかくお受けさせていただいた施行を完了しなくてはいけません。
傷のダメージのレベルから言うと先月施行させていただいた20年以上前のアルファロメオスパイダーか、昨年冬に施行させていただいたサーキットでも使用されているロータスエキシージ並みのレベルですので、本来ならば完全な施行をするには03コースか04コースの必要がありましたが、保険対応のため予算にも限界があり、お客様からのお預かりも期限があられるとのことで、02プラスの磨きコースで出来る限りの努力をさせていただくことになりました。
何とかこのレベルまでは回復させることが出来ました。
磨き後膜厚は112μでしたので、研磨膜厚は3μとなります。
正直傷が深すぎ数パーセントの傷は落としきることは出来ませんでした。
ではなぜもっと研磨をして深く削らないかという疑問をもたれると思います。
これには出来ない理由があります。
トヨタの202という塗装は国産車としては硬いほうの塗装ではありますが輸入車に比べるとかなり柔らかな塗装です。
なおかつ塗料特性が非常にデリケートな塗料ですのであまり強いプレス圧や熱を加えることが出来ません。
又研磨力の強いウールバフやコンパウンドを使用すると、それにより更に深い傷を入れてしまい最後に残る磨きで入れたスクラッチ傷を散らしきることが出来ません、これはトヨタ202に限らずソリッドブラックの塗装すべてに当てはまりますが、メタリックやマイカであればその粒子により細かい傷は見えなくなってしまいますが、ソリッドブラックの場合はそれがダイレクトに見えてしまいます。
ソリッドブラック特にトヨタ202の場合には傷が多かったり深い場合に完璧をもとめるには、ペーパーを掻け熱を加えず磨きにより余計な傷を入れないように少しずつ研磨していく以外方法はありません。
完璧とはとてもいえませんが磨きのコースと日程の中で精一杯の施行はさせていただきました。
TOYOTA トヨタ ヴェルファイア コーティング終了
何はともあれ施行は終了することが出来ました。
車内清掃が終了したのは御納車前日の午後11時30分滑り込みセーフでインターバルも取ることができました。
完全に傷を取りきることができなかったのでスタンドさんがオーナー様にご確認を頂く際にご納得いただけるかがかなり不安ではありますが、できる限りのことはさせていただいたつもりです。
そうはいっても車磨き研究所に持ち込んできたときの状態からすれば月とすっぽん車が違うくらいの変化は十分あると思います。
これも202専用コンパウンドあってのことです。
しかしこのヴェルファイアを販売をされたトヨタディーラーも、補修を請け負われたトヨタディーラーも、自社で取り扱っている車なのですからどこよりも確実な対応がされて然りなのが、反対にどこよりもずさんとしか取られない対応をされることには不信感以外持つことは出来ません。
私の知り合いのトヨタディラーの営業マンなどは、202の新車の納車の際には日陰で車の確認をお客様にしていただくようにしているということも聞いております。
又知人で202の車を格好がいいからといって購入をしたはいいけれども、手入れをしてきれいにしようとすればするほどひどくなり、その車に乗っていること自体がストレスになってしまうといって手放した方もいらっしゃいました。
車を作られているメーカーのトヨタも、いくら202という塗装が市場で高い人気があるにしても、トヨタ系列の販売店でメインテナンスが困難なものを造ることもおかしいと思います。
せめて各販売店に対処方法をきちんと指導するなり、メインテナンスが可能なように塗装を改善するなりのことはメーカーの責任としてしていただきたいと思います。
このブログを読まれてトヨタ関係者の方や、トヨタ車オーナーの方には気分を害された方もいらっしゃるかもしれませんが、現実に起きた事実を客観的にご説明したに過ぎません。
現に今トヨタ202にお乗りになっている方や、ご購入を検討されて入れ方への現場のナマの声としてご参考になれば幸いです。
施工コース:エクセレントライトフィニッシュガラスコーティング+02磨きプラスコース(傷取り磨き)
施行料金:保険対応のため未公開
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