2010年11月13日公開|ランチア
ランチアの名車Lancia ランチア デルタ HF インテグラーレ16VコレッツィオーネⅡです、かつてはWRCの常勝マシンとして大活躍をしたマシンです。
いまだ中古車市場では人気も高く比較的玉も多く有りますが、程度のいい固体を探そうと思うとほとんどお目にかかることはありません。
外見だけではなくそもそもの構造上の問題として故障が多いのもこの車の特徴ですので機関等内部が完調のものはまずありえないという状態です。
しかしこちらのお車は外観・内装・機関共に此処までの車はお目にかかれないでしょう!
という位程度のいいお車です。
お客様のご好意により少し試乗をさせていただきましたが、とても16年前の車とは思えないすばらしい走りを体験できました。
エンジンも215ps程度のパワーですからそれほど速いとは予想していませんでしたが、非常にピーキーなエンジンですがストレスなく高回転まで回り、コーナリングでも4WD特有のプッシュアンダーもでず非常に乗りやすい車でした。
コーナリング中もシャーシのたるみも感じさせず狙ったラインどうりにトレースすることができ、先日乗った996ターボよりもすばらしいと感じるほどすばらしいお車でした。
雑誌などで見ているときは、
「この四角いメーターボックスがあまりいいセンスではないな!」
と思っていましたが、実車を見ると一発で気に入ってしまいました。
逆にこのレイアウトやデザインがいかにもラリーカーらしくいい感じです。
シンプルな内装ですが操作性を優先させたデザインです。
今のコテコテしたもの比べあっさりしたところが非常に好感が持てます。
色といいデザインといい最高です!
アルカンタラのシートにもほとんど汚れや傷はありません、ほとんど新品といっていいほどの状態です。
現オーナー様もかなり車を大事に扱われる方ですが、その前のオーナーの方の管理は凄いとしか言いようがありません。
それはそのはずです、フロアとドアの内張りには新車時のビニールがそのまま残っています。
ここまでされているのですから綺麗なはずです!
新車時に装着されていたホイルと同じデザインで17インチで現オーナー様が特注されたワンオフホイルです。
新車時は15インチですから2インチアップですが返ってこのほうが車体のデザインとあっているようです。
あえて社外ホイルではなく純正デザインでオーダーされたところはセンスのよさに脱帽です。
エンジンルーム一杯に押し込まれた2Lターボエンジンです。
これだけ空間がないのですから壊れやすいのはしょうがないかもしれませんが、その代わりに得た高性能は代償としてはおつりが来ると思います。
なぜかエンブレムの中に像が4匹います!
勉強不足のためその理由はわかりません。
いくら程度がいいといっても年式なりに傷はかなり入っていますが艶は失われておらず、かなりきちんと手入れされていたことがわかります。
ましてや紫外線の劣化が激しいソリッドの赤ですがまったく日焼けの兆候はありません、間違いなく車庫保管されていたお車です。
車を大事に長くいい状態を保つ為には車庫保管は絶対に欠かすことは出来ません、できることなら24時間365日空調管理が出来ればなおのことです。
更に長期間動かさない場合には馬をかってブッシュなどに一定の力が掛からないようにしてあげれば足回りの劣化も防ぐことができます。
ボンネットの膜厚は磨き前に222μもありました。
まだ油性塗料の時代ですので膜厚はかなり厚めです。
と安心して磨いていくと事件が起こってしまいました。
エッジ部分を磨いているときに異変に気づきました!
エッジの部分を良く見ると多少色が薄く見えます、クリアーがもうほとんどありません。
ハードな磨きをしなくてもどうしてもエッジの部分はバフのあたりが強くなってしまう為に、16年間の中で何回か磨かれているうちにクリアーがほとんど無くなっていたのです。
あわてて膜厚を測ってみるとボンネットの半分も膜厚は残っていませんでした。
しかし傷を取る為に磨きをご依頼いただいたのでクリアーをなくさないように注意をして施工を進めます。
しかし更なる大問題が発生してしまいました!
エッジ部分から塗装が完全になくなってしまいました、このパネル部分はクリアー塗装が無くおそらく数μしか塗装が残っていなかったようです。
16年の間に何回か塗装補修をされ本来であればクリアーを入れた2コート塗装のはずが、クリアー無の1コート塗装で補修されていたようです。
本来であれば1コートであってもそれなりの膜厚で塗装をするので問題はないのですが、やはり長い年月の間に磨きが繰り返されエッジ部分だけ極端に膜厚が薄くなっていたようです。
問題が起こるときは次から次へとおきてきてしまいます。
パテの入っているところが磨きにより浮かび上がってきてしまいました。
パテは長い年月の間に縮むことは避けられません、その縮んだパテが塗料を吸い込み劣化硬化することでこのような状態になってしまいます。
この症状はパテを入れてある部分では必ず何れ起きてきてしまう症状です、やはりこの部分もクリアーの無い部分でしたがクリアーがあればもしかしたらまだこのようにならずに済んでいたかもしれません。
なぜそうなのかというと、有色塗装の樹脂密度よりもクリアーの樹脂密度のほうが緻密な為紫外線による劣化も防ぐことができ塗料の中の油分の抜けも遅延することができるので、劣化硬化するスピードを抑えることができます。
ソリッド車にお乗りの方は板金塗装に出される際に気をつけて頂きたいのは、本来クリアーがある塗装車両なのに補修塗装ではクリアーをいれずに1コートで塗装されることがしばしば見受けられます。
これはちょっと見ただけでは判らないことがほとんどです。
このようなことはまともな塗装屋さんではほとんど無い事ですが、事故などで保険会社手配の修理工場などに入庫された場合や、極端に値切った塗装を依頼された場合などに起こる可能性が高くなるようです。
実際車磨き研究所に入庫されるお車のなかにはオーナー様が知らないうちに2コート塗装のお車が1コートで補修されてしまっていることがたびたび見受けられます。
塗装補修の際にはきちんと確認をされることが大事です。
パネルのいたるところで問題が発生してきてしまったので、ご依頼内容の傷を取る磨きはあきらめ塗装をほとんど研磨せず艶を出すだけの磨きに切り替えました。
細かいスクラッチだけはそれでも処理できるので施工前と比べると格段に艶を蘇らせることはできました。
Lancia ランチア デルタ HF インテグラーレ16VコレッツィオーネⅡ コーティング終了
不本意な施工とはなってしまいましたが、何とか艶だけは蘇らせることができたのは幸いでした。
これで更に塗装が紫外線などで劣化していればこの艶を出すことも出来ませんでした。
このお車の場合塗料劣化は限界範囲内でしたが度重なる補修と磨きのため膜厚が限界を超えてしまっていましたが、膜厚が有っても塗料劣化が限界を超えてしまっていても又完全な施工はすることができません。
施工中にポルシェの修理屋の社長が見えられこのお車を見て、
「又ペーパーをかけたの、やはりペーパーをかけると艶が違うね!」
とおっしゃり、
「いやいや塗装が限界で傷取り磨きもスポンジですら出来なかったので、艶出し磨きで軽くスクラッチを取っただけですよ」
と答えると、
「それでこの年式の塗装でも此処まで艶が戻るんだ?」
と驚いてくれたのが救いでした。
納車の際に塗装の状態をオーナー様にご説明させていただき一見きれいには見えますが実際には塗装が限界を超しているので長くお乗りになられるのならば早めに全塗装されることをお勧めしたところ、この冬の間に全塗装されるご決断をいただきました。
ルーフの部分はおそらくオリジナルの塗装と思われるのですが、其処の部分にまだ小さい数ミリ程度ですがクリアーの蜘蛛の巣状のひび割れがところどころにできていることが大きな決断の理由のようでした。
過去にも964で似たようなことがありましたが、ある程度年式のいったお車の場合はワンオーナー車などで過去の経歴が把握できていない場合は起こりえる症例です。
低年式車の場合はこのようなことが想定されますので何箇所も膜厚確認等で注意はしておりますが、まだまだ注意が甘かったことを認識いたしました。
今回のことは非常にいい勉強となりました。
これを肥やしに更なるレベルアップにつなげるよう努力いたします。
大切なお車を完全な施工でお渡しできず大変もうしわけございませんでした。
施工コース:マーベラスフィニッシュ・スノーガード ガラスコーティング+02磨きコース(軽度の磨き)+ホイルガラスコーティング(フルコート)
施工料金:72.324円税込み(輸入車割り増し磨き10%・ソリッド割り増し磨き10%・お持込お引取り割引10%・リピーター割引10% 適応)
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