2010年12月05日公開|ホンダ
平成3年登録のなんと19年前のNSXです。
発売からすでに20年もたっているデザインとはとても思えない十分現在でも通用するすばらしいスタイリングです。
トヨタ2000GTと並ぶ世界に誇るスーパーカーの一台ではないでしょうか。
内外装ともとても19年経過しているとは思えないコンディションですが,そうはいってもさすがにくたびれてきている外観と内装のリフレッシュのためご入庫いただきました。
この一年間だけで数百万円を投じてエンジンは車体からおろして整備をされ、ミッションはATからMTに乗せかえられ、足回りもほとんどのパーツが新品に交換されています。
オーナー様のお車に対しての熱の入れようは並々ならぬものを感じます。
正直NSXをモデファイするかフェラーリを購入するか迷われたそうです!
この当時でこれだけ派手にフェインダーにエアダクトを付けた車は国産車ではNSXだけでしょう。
ただしここまでやるのならブレーキにももうちょっとお金はかけてもらいたかったとは感じます。
最近までの国産車の傾向として外観やエンジン性能などにはこだわるけれど、制動能力は二の次という傾向がありましたが、車は絶対的な速さよりいかにとまりきることができるかの方が重要です。
現在に至ってもやはり制動能力は欧州車特にドイツ車とイタ車には大きく水をあけられたままです。
現在でもホンダ車は他社に比べると内装特にメーター周りの質感不足は否めませんが、NSXにおいてもそこは同じ感覚で製造されてしまったようです。
おそらく販売シェアは国内とアメリカがターゲットとなっていたためこの内装で落ち着いてしまったと思われます。
販売主力が欧州であればもっと違ったグレードの高いものになっていたのではないでしょうか?
そうすればバブル崩壊後の急激な販売の落ち込みもポルシェやフェラーリとの競合相手となりえて抑えられたのではと感じます。
この当時国産車でもいくつかの車種でリトラクタブルヘッドライトを採用していますが、このスタイルはやはりNSXが一番似合います。
フェラーリでも多くの車種で採用していましたがそのスタイリングは比較しても決して遜色のあるものではありません。
NSXの特徴であるリアオーバーハングの長さですが、熱対策や空力など性能追求のための結果というのが一般的ですが俗説として、
「役員の一人がゴルフバックを積めるようにしろ!」
といったのが発端だという説もあります。
普通ならそれはないでしょうと思いますが、某雑誌社の編集長がトヨタの役員と話をしている際にマセラティの話をしたら、
「マセラティという新しいメーカーができたんですか?」
というとんでもない言葉が出てきたそうですから、あながち嘘とも思えなくなってしまいます。
こんな馬鹿な役員が居るのですから国産車のデザイナーやエンジニアは大変な苦労の末にNSXのような歴史に残る車を世に送り出されているのだと思います。
NSXの特徴としてこのエンジンハッチの二重構造があります、官能性よりも移住性を重視して遮音効果を高めています。
運転席の後ろのガラスも二重ガラスにするなどかなり移住性に神経を使っています。
このような部分もイタリアンスーパーカーとは大きく方向が違います。
これはいい悪いではなく好みの問題だと思います。
NSX最大のウイークポイントはエンジンにあると思われます。
エンジン単体で見た場合には3L NAで280psととてもいいエンジンではあるのですが、スーパーカーというカテゴリーの中に組み入れて見てしまうと非力さは感じてしまいます。
過給機などを使用して更なるパワーアップという方法を選択せずにNAで勝負したところはさすがエンジン屋ホンダと言った所ですが、大排気量エンジンを持たないためいくら採算度外視のNSXといえどもそれだけのためにエンジンを作ることができなかった苦しさだったのでしょう。
しかしエンジンをかけて見ると、乾いた金属的なレーシーなサウンドでホンダお得意の高回転型高性能エンジンであることを主張しています。
このサウンドを聞くとホンダがあえて過給機の使用をしなかったかがわかるような気がします。
ボンネット内に納まるスペアタイヤですが、はじめて見るスペアタイヤです。
当時国産車のなかでは最高値の車だけあってホイルもアルミを使用しています。
これはオーナー様こだわりのバックビューカメラです。
ナンバーボルトの部分に組み込まれ非常にスタイリッシュに仕上がっています。
この時代ほかのスーパーカーでも電動シートは珍しい中、さらにすごいのはフルバケットタイプでありながら電動でリクライニングまでします。
この当時のスーパーカーは車に体やドライビングポジションを合わせるのが当たり前で、それが無理な体形の方は購入を見合わせなければいけないようなこともありましたが、NSXはほとんど誰でも好きなドライビングポジションが取れるようにシートが作られています。
これは当時としてはかなり画期的なことだったと思います、今シートに座って見ても非常に優れたシートという感覚をもてます。
室内の遮音性など移住空間の快適さに関しては今当時のスーパーカーの中では群を抜いた快適性だと思います。
速さや官能性だけがスーパーカーではないといういい例です。
今回はシートのリペアの施工もご注文いただきました。
さすがに19年の歳月はいくら大事に扱ってきてもシートの擦れによる痛みや汚れは防ぐことはできません、ましてやこのように白となれば当然です。
オーナー様は張替えもお考えでしたが、痛みはあるものの破けたりしているわけではないので張替えをしてオリジナルでなくなることよりも、少しでも長くオリジナルの状態を維持し素材自体の限界が来るまで張り替えはしないでおくことといたしました。
リペアーの内容は革のささくれやしわ等はクリーニングのあと革専用のパテをいれ、周りのシボと同じようにパテにシボを入れてやり色を塗ってあげます。
パテを入れた部分は多少は触ったときの硬さに変化はありますが、違和感があるほどの違いは出てきません。
見た目ではほとんど新品と変わらないくらいの質感まで回復します。
このお車では有りませんでしたが、モケットやカーペットなどのタバコの焼け焦げなども修復可能です。
シートがいくらきれいになってもそれ以外の車内が汚れていてはシートだけが浮いてしまってそれも変ですので、車内丸洗いクリーニングと車内光触媒コーティングの施工もいたしました。
本当にきれいに乗られてきているのでそれほど汚れによる色変わりや紫外線による退色もほとんどありませんでしたが、コーヒーのこぼれあとや油汚れなどはあり車内丸洗いクリーニングによりかなりきれいになりました。
クリーニング後に車内光触媒コーティングを施工することで、新たな汚れの付着や臭いの付着を防ぐことが可能になります。
また新車でない限りエアコンの送風パイプの中などは雑菌やカビなどによりかなり汚い状態になってしまっており、それが原因で”嫌な臭い”などがしたりしますが、車内光触媒コーティングで送風パイプの中までコーティングを施工することで、今あるカビや雑菌を殺し新たな繁殖を防ぐことができます。
この効果は有機性の薬品の成分では一切なく金属イオンを使い雑菌やカビなど単細胞の核だけを破壊するものなので、人体に対しての影響は一切ない安全なものです。
またウイルスなども破壊しますから風邪の予防にも有効ですし、走行中に外気よりは行ってくる排気ガスなどのNOX・SOXなども分解しますから車内空間を非常にクリーンな環境に保つことができます。
深い傷も多少はありますが、ほとんどの傷は洗車によるスクラッチ傷のようです。
ソリッドの黒ですから19年という歳月を考えればこれでもかなり程度はいいと思います。
おそらく車庫保管はされていたと思われます、露天駐車で管理されていたとすればおそらくクリアーは完全に紫外線により劣化し磨きで再生できるレベルは超えていたと思います。
磨き前膜厚は146μでした。
当然塗装は油性塗料ですからオリジナル塗装とすればおそらく20μくらいはすでに塗装が磨り減っていると予想されますが、あとクリアーの残り膜厚は20μ程度は残っていると考えられます。
とにかくきれいにされたいとのことで、03コースで磨くこととなりました。
ペーパーをかけるとこんな感じとなります!
ペーパー施工後の膜厚は144μでした。
ほとんどの方がこの状態をごらんになられると”再生不能”と感じられますが、これが鏡面磨きのはじめの一歩です。
ペーパーを当てた部分に光を当てて見るとさらにすごいことになっています。
ペーパーが付けた線傷で埋め尽くされています!
左側がウールバフでペーパー傷を処理したところです。
白くついていたペーパーの傷はなくなり、黒の艶のある色が戻ってきています。
白いペーパー目は消えましたが、代わりにウールでついたポリッシャーの回転傷に変わっています。
この後段階を踏みながら傷を寄り細かい傷に置き換えながら仕上げて行きます。
この際に新しい傷の深さをいかに浅く磨くことができるかが残存膜厚を多く残すコツとなります。
ウールバフ施工後の膜厚は142μ、ここまでの研磨膜厚は4μとなります。
油性塗料はやわらかいので気をつけて研磨をしないと一気に膜厚を下げてしまう可能性があります。
水銀灯の周りにあったポリッシャーの線傷はほとんど見えなくなりました。
しかしこれで傷がなくなったわけではなく細めのスポンジバフが入れた傷やコンパウンドの入れた浅い傷が残ってはいます。
あと2回のスポンジバフでこの見えない傷をさらに見えない状態まで仕上げて行きます。
ソリッドブラックの場合本当に細かい目では確認できないような傷でも残っていると、オーロラのようにゆらゆらした感じのちょっと紫がかったいわゆるオーロラ傷というものが出てしまうので、磨きのなかでは一番厄介な色です。
スポンジバフ1回目終了後の膜厚は140μでした、あと2回のスポンジバフで少しでも膜厚を下げずに磨ききることが課題となります。
磨き終了後の膜厚は139μでした、総研磨膜厚は7μとなります。
残存膜厚を考えると今後はスポンジバフでの磨きが数回行うのが限界と思います。
しかし今回硬いガラスコーティングを施工しますので傷は塗装まで簡単には達することはないため、よほどのことがない限り再度塗装を削るような磨きは必要ないと思います。
ただしイオンデポジットや深い洗車傷を入れないようにする気遣いは必要です。
艶も完全に戻り塗装の輝きが復活してきました。
ここまできれいになれば全塗装などをしてオリジナルをなくしてしまうより、磨けるだけ磨いて少しでもきれいなオリジナルの塗装を楽しむほうがいいと思います。
全塗装はいよいよ磨くことすらもできない状態まで行ってからでも遅くはないのではないでしょうか?
さすがにドアカップは19年分の傷がかなりのレベルでついてしまっています。
ポリッシャーの使えない部分ですので手磨きで処理をするため完全には磨ききることはできませんが、見違えるほどきれいにはなりました。
この様な状態になることを防ぐために新車のうちからドアカップにはペイントプロテクションフィルムの施工がお勧めです。
ペイントプロテクションフィルムでも傷は当然入りますが、傷が目立つようになれば張り替えることで簡単にきれいな状態に戻すことが可能となります。
ドアステップのアルミの部分や未塗装樹脂部分にもコーティングを施工することで、艶が復活したことによりドアを開けたときの印象もだいぶ変わってきたと思います。
このようなところのコーティングも当然標準施工範囲に含まれています。
HONDA ホンダ NSX NA-1改 コーティング施工終了
ソリッドの黒が光り輝きとても19年前に製造された車とは思えない美しさです。
残念ながら国産車はバンパーなどの樹脂部分にはペーパーをかけることはできません、樹脂に対しての塗装の密着が弱いため磨きの工程のウールで熱が入ったときに剥離してしまう恐れがあるためです。
磨きの知識がおありの方でしたら、
「だったら熱の入りにくいギアアクションポリッシャーで磨けばいいんじゃない?」
と思われるかもしれませんが、磨きの初期段階で強い研磨が必要なときにギアアクションを使用すると当然プレス圧も強くなるためにギアアクションが付ける鍵傷を入れてしまう可能性があるために、車磨き研究所では使用いたしません。
ここで入れてしまう傷は磨き傷というよりも叩き傷ですので非常に深い傷で、樹脂のように柔らかい素材ですと傷を取りきることはまず不可能になってしまいます。
ですから樹脂部分の塗装を洗車する再には更なる注意をしていただいて、深い傷を付けないようにする必要があります。
今回の施工は、ご紹介させていただいた施工以外にもウインドウフィルムの施工までいただきました。
車磨き研究所では直施工ではウインドウフィルムの施工はしておりませんが、安価で丁寧な施工をしてくださる協力業者様に弊社工場に出張で施工していただいております。
量販店に比べ価格は高いと思いますが、使用するフィルムの質や施工レベルから見ればお安くご提供できていると思います。
今回はたくさんの施工以来をいただきありがとうございました。
施工コース:エクセレントフィニッシュ・プレミアム ガラスコーティング+03磨きコース(鏡面磨き)+車内丸洗いクリーニング+車内光触媒コーティング(プレミアム)+シートリペア(二脚)+ウインドウフィルム(サイド熱線遮断クリアー・リアブルーハーフミラー)
施工料金:304.698円税込み(ソリッド割り増し磨き10%・濃色車割り増し磨き10%・材質割り増し磨き10%(アルミ)・お持込お引取り割引10%・長期お預かり割引20% 適応)
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