2011年07月27日公開|日産
かなり懐かしいお車です!
長い間打ち切りとなっていましたが、二十数年前にGT-Rの復活を果たしたR32です。
当時の国産スポーツカーとしてはかなりの高価格でしたが、その飛びぬけた性能により非常に売れまくったニッサンの名車です。
オーナー様はまだお若い方ですので、このGT-Rが現役だった頃はまだ小さなお子さんだったと思いますが、あえてこの32を今回ご購入されたそうです。
新車から18年が経過していますが、購入価格は約150万円だったそうです。
普通の国産車であれば当然ただのレベルの年式ですが、さすがに名車GT-Rですしっかり価格が残っています。
見た目の程度は決して年式から見ると悪くはなく見えますが、いざ施行が始まってみると意外なことがおきるのが低年式車の常です。
それでは早速施行へと入っていきます。
まずは鉄粉クリーニングを行ないますが、ボデイ全体から恐ろしい量の鉄粉が溶け出してきます。
紫色の液体が、溶けた鉄粉です。
このレベルの鉄粉量はいままででもおそらく最高レベルと思います。
出だしからかなりやばい雰囲気がしてきます・・・
おそらくかなり長い間放置されていたか、ほとんど手入れされずに使用されていた可能性が高くなります。
これだけ鉄粉が刺さっているということは、かなり塗装は劣化している可能性は高いはずです。
年式からいって当然ですが、傷は全面にくまなく入っています!
但し幸いなことに深い線傷はほとんどありません。
しかしちょっと不安なものも見えています。
浅い傷の中にペーパー目のような傷が確認できます!
ペーパー目があるということは再塗装をされているということになり、しかもその施行レベルは非常にお粗末な可能性があることになります。
何か嫌な予感がしてきます・・・
又トップ部分には染みができてきていますが、雨染みともイオンデポジットとも違う変った滲みです。
見た感じでは塗装には食い込みは起していないようなので、これは磨きで問題なく処理できるとは思います。
磨き前膜厚は105μですが、この時代のソリッド塗装としては2/3程度の膜厚しかありませんので、やはり再塗装がされているのは間違いないようです。
どんどん不安要素が増してきます。
再塗装されているのはほぼ確実ではありますが、その再塗装もかなり前に行われていると思われますし、ペーパー目が残ってしまっていますので、塗装をリセットする意味でも03コースの磨きが必要と思われます。
磨き前膜厚がとりあえず100μ以上ありましたので、施行可能と判断しました。
#3000ペーパー施工後の膜厚は103μでしたので、ペーパーでの研磨膜厚は2μと言うことになります。
この程度の研磨膜厚だったらバフでも研磨可能ですが、ペーパーで研磨するメリットは熱をかけずに痛んだ塗装部分をそぎ落とすことが可能なことは、熱により塗装に無駄なストレスをかけずにすむメリットがあります。
写真の線より左側の部分がペーパー目をウールバフで磨き上げた状態です。
ウールバフで磨き上げた部分は蛍光灯がきれいに写りこんでいますが、ペーパー施行されてだけの部分は光源があるのはわかりますが、まったく輪郭はわかりません。
これは極端では有りますが、傷により光が乱反射したり傷に吸収されてしまうために映り込みがしなくなっています。
つまり傷があることでこの様に光沢や艶が落ちてしまっていることになります。
傷がある状態で、幾らポリマーやWAXをせっせと施行しても、あくまでポリマーやWAXの表面反射で艶があるように見えているだけですので、磨き上げて下地から光沢が上がったものとは比較にはなりません。
ウールバフ施工後の膜厚は101μ、ウールバフでの研磨は2μとなり、ここまでで計4μの研磨となります。
しかしここで大きな問題が出てきてしまいました。
再塗装が全体にされていることは途中でわかってはいましたが、
磨き始めると瞬間でコンパウンドが焼きついていきます。
いままでなかったレベルで焼き付を起こしていきます!
塗装自体のものがいい場合はポリッシャーはかなりの高回転でもきれいに磨きあがっていきますが、今回は普段の約半分の速度まで落としてもコンパウンドの焼き付きが止まりません。
これには二つの大きな理由が考えられます。
まずは根本的に使用されている塗料の品質が悪いことと塗装自体の方法が非常にいい加減に塗装されている。
後はこの様な状態で経年劣化しているので塗料の潤いを保つべき油脂が抜けきってしまっていることが考えられます。
もう一つは先に書いた多量に食い込んでいた鉄粉の影響です。
クリーナーにより鉄粉は除去されてはいますが、その後には穴が開いていることになります。
当然その穴の近辺の塗料は鉄粉の酸化とともに劣化していきます。
結果コンパウンドの油脂が粗い塗装の目に引っかかり吸い込まれることですべりが悪くなり焼きついていくと考えられます。
この状態ですから通常の磨きの3倍近い時間を要しながら磨きを進行させていきます。
嫌な予感はドンピシャ当たってしまいました!
問題はそれだけでは有りませんでした。
なんと塗装の色が違います!
リアクオーターパネル左右とそれ以外の部分が明らかに色が違います。
調色の色が多少合わないというレベルではなくまったく色が違います。
リアクオーターパネルは黄色みががった白、いわゆるクリームホワイト系の色で、それ以外の部分は青みがかった白です。
写真では判りずらいですが、これだけ違うと夜間でも誰が見ても色が違うことは判ると思われるレベルです。
なぜ初めからわからなかったのか?
おそらく劣化した塗装がくすみとなり、その色の違いをあいまいにしていたのと、磨き前の状態にあった染みがおそらくかなり強い反射をする油脂が塗られていたものだと思います。
磨きによりそれらは剥ぎ取られることにより、新しい塗装面が現れることで色の違いが判るようになったのだと思います。
ダメ押しのように更に問題は出現してきます!
“Cピラーにパテ痕が現れてきました”
ということはリアクオーターパネルは交換されていることになります。
それ以外の部分がその前に全塗装されていて、その後何らかの理由によりリアクオーターパネルが交換され塗装されたことになります。
これ自体は事故によるものなのかどうかの判断は付きませんが、一応全体のパネルの補修状態を確認してみたところ、前後とも事故による補修を受けたと思われる痕跡が発見されました。
ここまで大掛かりな補修がされているのではトラブルが出るのは当たり前かもしれません。
トラブルは続出したものの磨きは何とか終了することは出来ました。
色の違いによる問題は磨きでは解決できませんが、
全体の光沢や艶は施行前と比較しても別物の仕上がりとはなりました。
磨き終了後の膜厚は98.6μでしたので、総研磨膜厚は6.4μとなります。
03コースの磨きとしては平均的研磨厚で施行は完了しました。
NISSAN ニッサン スカイライン GT-R コーティング終了
塗装自体の問題とはいえ、この仕上がりには満足することはとても出来ません。
但しパネル単位で見てみる限り、
その光沢や艶は新車のレベルをはるかに超える仕上がりには到達できました。
ここまでの塗装のトラブルはそうはないことです。
しかし18年という歳月と、GT-Rという特殊な車であることを考えるとある意味仕方ないことなのかもしれません。
このお車は走行距離6万キロですから、メーターに細工がされていなければこの距離の車自体がそれほどあるわけでも在りませんので、価格150万円ということを考えれば、ほかに何か問題を抱えていることも当然かもしれません。
バリもののR32となると300万円から高いものでは500万円近いのが相場のようですので、距離も短く基本的な外観内装がオリジナルを保っているだけでも価格からすればお得だったのかもしれません。
どちらにしてもこれ位の年式の車を購入するということは、何らかのリスクを抱えていることは覚悟が必要です。
輸入車でもポルシェなどは同じようなトラブルをよく耳にします。
安い価格で飛びついて買って妥協をするか、法外な高価格を支払ってでも完璧なものを追求するかは選択としては難しい問題です。
個人的には、いじり倒して乗るのであれば前者でいいと思いますし、オリジナルを楽しむのであれば後者を選択するべきだと思います。
但しいじり倒すにも、エンジンをフルチューンするようなレベルであれば、ボデイ自体の補修経歴があるものは避けるべきでしょう。
ただでさえ経年劣化により剛性は低下しているところに、補修を受けていれば必ず歪みや剛性低下を引き起こしています。
下手をしたら車がばらばらになることさえ否定できませんから!
思い入れのある低年式車をご購入されることは決して否定はしませんが、何をそこに求めどこまでを要求するのかをはっきりとしたなかで、余裕を持った予算が必要でしょう。
出来れば専門店での購入が無難だと思います!
車両クラス:クラスM
施行コース:マーベラスフィニッシュ・スノーガード ガラスコーティング+03磨きコース(鏡面磨き)
施工料金:111.510円税込み(お持込お引取り割引-10%・ソリッド割り増し磨き+10% 適応)
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