2013年03月31日公開|ポルシェ
またカイエンで黒です・・・
ジェットブラックメタリックという色ですが、なぜかカイエンは此の色が圧倒的に多い?
実際今までのカイエンの施工車、濃色車以外は無し・・・
それでもソリッドの“ブラック”でないだけましですが・・・
個人的にはクラッシックシルバーメタリックか、
ソリッドのホワイトのほうがおしゃれで知性的なような気がしますが?
此方のお客様以前のお車もカイエンだったそうですが、その際はホワイトにお乗りだったそうですが、
「生まれて初めて黒の車を買いましたが、黒ダメですねー」
と、おっしゃっていました。
その黒ダメ理由は、水染み!
お住まいのエリアは確かに酸性雨もきついのですが、何よりも水道水の水質が悪い・・・
極端なアルカリPHです。
1回洗車しただけでも拭き取りをさぼれば一発で水染みの餌食となってしまいます。
お客様に管理状態をお聞きしてみると、
「洗車は自分で手洗い。」
「だけど、拭き上げしたことはないですねー」
「保管は自宅では露天駐車ですし、
庭は植木だらけですから花粉・樹液はもろに車にかかる状態です・・・」
これでは水染みで切るのは当たり前!
新車購入3か月後にはボデイ全面水染みだらけになっていたそうです。
当然今回のご入庫の理由はこの水染みの除去が目的ですが、実は1月に1回ご入庫いただいているのです。
しかしその際、私の所見が悪く、新車ご購入からわずか1年しか経過していないため、単なる水染みと勝手に思い込み02スタンダード磨きコースでご提案して施工してみると、まったく水染みは取れない・・・
実は水染みと思い込んでいたものは、すべて“イオンデポジットクレーターに進化”していたのです。
試しに#3.000のペーパーをかけて1区画だけ磨いてみると、
完全にイオンデポジットクレーターは除去できました!
そこで今回予定の02スタンダード磨きコースではダメと、
お客様に現状報告して03パーフェクト磨きコースに変更の必要があることをお伝えすると、お客様は当初の施工価格よりもさらに10万円以上高くなるにも拘らず、
「そのコースに変更してください!」
いとも簡単にOKです、35万円近い施工費になるにもかかわらず!
しかし03パーフェクト磨きコースとなるとお預かり期間は2週間必要となりますので、1週間のお預かり延長が必要となりますが、これは都合上まずいとのことで、今回はこの状態で一回お車はお返しして再度ご入庫し直しとなりました。
しかし正直このクラスの車格、
しかもガチガチに硬い塗装を03パーフェクト磨きコースなどでは磨きたくない・・・
そこで思いついたのが、ポルシェセンターでクレーム扱いにしてもらえば、
お客様も支払いが無くなりますし、私も施工しなくて済む!
早速ポルシェセンターにTEL,現状の状態を説明しましたが返答は、
「そりゃー、管理上の自己責任でしょう!」
「直せと言われれば直しますが、当然有料ですよ。」
とのこと、もっともです。
「弊社で施工すると35万くらいかかりますが、ポルシェセンターでは幾ら?」
とお聞きしてみると、
「そこまではかかりません、25万くらいですかねー」
とのことでしたので、そのことをオーナー様にお伝えすれば、
10万も安く上がるからポルシェセンターに依頼されるかな?
と期待してお伝えしたところ、
「新車時コーティングを依頼した施行店にどうせポルシェセンターは持っていくのでしょう?」
「こんな状態になったコーティングを施工した店で再施工は嫌です!」
「高いのは構いませんし、一度無駄足を踏んでいただいて他で施行とはいかないでしょー」
と非常に律儀なことをおっしゃっていただきました!
ここまでご信頼いただいて施工をしないわけにはいきません!
という訳で、今回のご入庫となりました。
しかし・・・
ご入庫いただいて施工前に一応念のためにと膜厚を測ってみると、なんと膜厚は100μ以下!
一番厚いところで99.2μ・・・
薄い部分は90μを切っています。
実は前回は試し磨き前に膜厚測ってなかったので、この段階で発覚したのです。
これもまたもや私のミス・・・
今までご入庫いただいていたカイエンは全て膜厚は100μ以上ありましたし、今までの施工経験上“ポルシェの膜厚は厚い”という勝手な思い込みがありました。
経験が逆に仇となりました・・・
こうなると、#3.000番のペーパーはできるだけ避けたい。
よくよくボデイ全体を観察してみると、トップの部分はイオンデポジットクレーターに完全に爪が引っ掛かりますので、これは#3.000のペーパーは必要ですが、側面部分はそこまでの状態ではありません。
トップ部分はしょうがないにしても、施行方法によっては側面部分はペーパー掛けを避けられるかも?
外で撮影しているためにちょっと見ずらいですが、メッキモール下を見れば水染み(イオンデポジット)見えます。
ボンネットはこのような感じ・・・
フロントフェインダーもこんな感じ・・・
そこで考えたのが、スプラッシュビューで使用する鱗落し剤を使用して、ボデイのスケールリムーバーとして使用すること!
この鱗落し剤非常に優れモノで、アルキル基以外のものは溶かしません。
ただしかなり使用方法は難しいので、このような高額車輛に使用するのは非常に注意が必要ですが・・・
更には特殊なものなので価格がめちゃくちゃ高価・・・
ウインドウレベルの面積でしたら、全面施工しても50ccも使わないのですが、カイエンクラスとなると300cc以上使用します。
材料原価だけで軽く10.000円を越してしまう!
更には1パネルずつ、スケールリムーバー作業を行い、液剤が乾かないうちに水染みを処理して行かなければいけないので本当に大変です。
結局この作業3時間を要しました!
側面部分の多くは、
スケールリムーバー作業によりほとんど水染みのアルキル基の付着は無くなりました!
イオンデポジット化してしまっている部分、
クレーターの中に蓄積されたアルキル基も溶けてなくなっています。
固着したアルキル基は塗装より2倍以上硬いので、これを磨きで掻き出す作業がなくなるだけでも無駄な研磨が省けることとなります。
科学の力ってすごいですねー
この写真が、アルキル基が取り除かれクレーターだけが残った状態です。
これだけのイオンデポジットクレーター痕はそうそうありません!
スケールリムーバー作業前には付着した水染みにより隠されていた傷があらわになります!
傷までボデイ全面を覆い尽くしています・・・
これが2.000万円近いお車の1年後の姿とは?
↑この白く見える深い傷取りきれるかな?
ご自身で手洗い洗車されていたようですが、
水染みを取ろうとかなり強引に擦りながら洗ったのでしょうー
傷の上に又傷・・・
柔らかな練プラ部分当然水染みの進化系イオンデポジットが多量にできています。
しかし、このような垂直に近い部分はなかなかここまではなりえないのですが、水道水・雨の水質が悪いのは確実ですが、オーナー様の管理方法もこれは大問題・・・
硬いポルシェの塗装にこれだけ傷を入れるのは、なかなか至難の業?
側面部分の傷もすごいでしょう!
此の山の様な車を、これだけの傷を処理していかなければならない。
非常に憂鬱・・・
しかし、お受けした仕事ですから出来る限りの努力・忍耐を持ってご満足いただける仕上がりにしなくては!
“プロに泣き言は許されません”から。
と、もう言ってますね・・・
トップ部分のみ#3.000のペーパー掛けが終了し、残存膜厚は95.8μですので、ペーパーでの研磨膜厚は3.4μとなります。
順当な研磨膜厚です!
しかし塗装が高硬度耐スリクリアーですので、ペーパーすら滑ってしまいなかなかペーパーがきれいにかかりません・・・
通常の塗装の2倍くらい時間かかりました。
赤い線で囲った部分、2段階目の作業、特殊ウールバフにより#3.000で入れてしまったペーパー目を除去するための磨きを行った部分です。
このウールバフ、細かなラウンド(柚子肌)は残しつつも、
大きなラウンドだけを柔らかなラウンドに変えていきます。
当然この段階でペーパー目は完全に処理していかなければなりません!
しかし、当然ウールバフにより新たな傷が入りますから、ぺーパー目の傷とウールバフによる傷を見極めながら磨かなくてはなりませんが、これが至難の業・・・
こればかりは経験がものを言う部分です!
当然しつこく磨けばペーパー目は取れますが、それは無駄に膜厚を削る行為・・・
ペーパー目を取りきったぎりぎりの見極めが必要です!
ウールバフ施工終了後の膜厚は94.4μ、つまりウールバフでの研磨はたった1.4μ!
という事は?
#3.000で入れた傷の深さは1.4μということになります。
このウールバフによる磨き作業はいかにこの段階での無駄な傷入れを防ぐか、此処の見極めは非常に重要!
この膜厚は次の行程であるスポンジバフ1段階めの施工終了後膜厚。
この磨き工程もたったの1μ!
この磨きの主目的は、ウールバフで付けてしまった研磨傷を完全に取りきることです。
其れと既存傷を最高3回のポリッシングでできる限り取りきることも大事な作業項目です。
深い傷を追って最高研磨回数の3ポリッシュを行っている部分はこれよりさらに研磨厚は多くなり、単純計算では3μ研磨している部分もあるでしょう。
しかし既存傷を磨く必要のない部分は、
ウールバフによる研磨作業では1μの傷しか入れていないことになります。
今回の磨きコースのオーダーはパーフェクト磨きコースですから、03コースの部分は都合6回の研磨、02プラスの部分で5回の研磨を行いました。
流石にこのでかさで、しかもジェットブラックメタリックですからへとへとです・・・
残存膜厚は92.4μですので、6.8μの研磨となりますが、既存傷のある部分はさらに研磨をしているでしょうから、最大研磨を行っている部分では90μを切ってしまっているかも?
よって今回と同じようなボデイ状態にしてしまえば、
もうここまでの意匠性回復は行なっても1回が限界でしょう・・・
しかし残存膜厚を考えると其れもあまりいいこととは言えません。
あとはきちんとした管理を心がけるしかありませんねー
リアフェインダーのこれだけあった傷もすっかりなくなりました。
見事!
フロントフェインダーの結構ハードな擦り傷もやはりしっかりと無くなりました。
恐らくこの傷は洗車の際に体をこすりつけてしまったときの傷でしょうが、今後は無理に車体に体を預けて行わず、“脚立や踏み台を用意”して行うようにしたほうが良いですねー
スケールリムーバー作業後もしっかり残ってしまっていたイオンデポジット痕も、側面ですのでさほど深さが無かったために02プラス磨きでも痕跡は一切残らず、
きれいに処理終了!
一見下地到達傷か?
と思われるような傷でしたが、この傷も全く痕跡は残らずなくなりました!
見た目ほど傷の深さは無く、傷断面の荒れで深い傷のように見えていたのでしょう。
意外とこの手の傷は多いですので、
「アー、これはもう塗装しかないのかな・・・」
とあきらめる前に、1回相談してみてください!
ご入庫いただいた時とは比べ物にならないほどきれいに回復できました!
しかし雑な管理のつけとして、
トップ部分は03パーフェクト磨きコースですら完全除去できない傷も数本残っています・・・
イオンデポジットもクレーター状のものはトップ部分も完全に除去はできましたが、針で刺したようなピンホール状のものは流石に残っています。
1番した左の写真のポツポツしたものがその痕跡です・・・
このカイエン恐ろしいオプションが装着されています。
20インチ以上対応のPCCBブレーキシステム!
ホイルとセットでのオプション購入となりますが、ブレーキシステムだけでも150万円以上これにホイルまで足せば200万円近いオプションのようです・・・
すでにこの段階で乗り出し価格は2.000万円越えです!
しかし冷静に考えて、カイエンにこのブレーキ日本の道路事情で必要か?
確かに恐ろしいストッピングパワーなのは疑う余地はありません。
しかし冷えているときの制動力は、スチール製のほうが良好なようですし、摩耗以外にクラックということも有りますので、ランニングコストは恐ろしくかかります・・・
ので、結論は絶体いらない!
あくまでインテリアですね。
金のかかるインテリアです・・・
此のお車はターボですので、アクティブスポーツシートが標準装備となっておりますが、さすがポルシェ革の品質は素晴らしい!
SUVでありながらこれだけのホールド性能を持たせた形状となっています。
もっとも、ニュルブルックリングの走行タイムは997カレラを上回る速さを持ったお車ですから、このようなシートも必要なのでしょう。
て、カイエンターボでカレラと一緒に飛ばしまくる人っているのか?
センターコンソールの作りはパナメーラとほぼ一緒。
カッコイイのは否定しませんが、あまりにもスイッチ類多過ぎ・・・
個人的には911系の様なシンプルなほうが好きですが、
かといって911ほど質感が低いのも嫌・・・
GT3なら別ですけど。
ターボの場合はBOSEサウンドシステムは標準装備!
高級オーディオ装備のリビング並の音質サラウンド感を堪能できます。
このステアリングオプションですが、これだけで20万円くらいします!
とにかくポルシェのオプション価格は常識的価格を逸脱しています。
調子こいて、これ欲しあれ欲しいで選んでいけばオプションだけで500万なんてざらです・・・
内装全体の作りは全てにおいて高級品ばかりが使用されているわけではありませんが、
全体的構成のまとまり感と、絶対品質のパーツの見せ方は非常にうまい。
商売上手です!
いや、車作り上手!
しかし、すべてのポルシェに共通する嫌いな部分、
メーターカバーの安っぽいプラスチック・・・
詳細は判りませんが、どうもこの部分もオプションはあるようですが、
標準仕様はあまりにもひどい。
この様に、スポット的にダサい部分をわざと残し、オプション購入に持ち込むのがポルシェ伝統の価格つり上げ戦略?
ま、最もターゲットは富裕層でしょうからこれでいいのでしょう・・・
輸入車・国産車問わず一般的車輛はとにかくエンジンを隠すのが現在の主流ですが、一部スポーツカーメーカーだけはこのようにエンジンをきちんと露出させています。
此の方が車らしいですし、当然放熱性もいいでしょう!
ちなみにこのカイエンターボ、500ps・70N/m・0-100km/h4.7秒、
車輛重量2.230kgです!
化け物ですね・・・
どこぞのBMWより確実に早い?
PORSCHE ポルシェ カイエン ターボ コーティング終了
やっと終わりました!
2週間お預かりの大仕事が。
今回はとにかく現状の悲惨な状態を回復することがまずは課題でしたが、
さほど苦労することもなくスムーズに作業を進めることが出来ました。
かなりハードな磨きからスタートしていますから、
最終的にポリッシャーによる“オーロラ傷残りが1番心配”だったのですが、ジェットブラックメタリックというお色から、パーフェクト磨きをお勧めしたところ了承していただけたため、現況回復にとどまらず、完璧な仕上がりまで持っていくことが出来ました。
お引き取りの際も、
「太陽光で見たほうが更にきれいさが際立つね!」
と嬉しそうにされていました。
濃色車の場合、このように太陽光下で確認をされるのが、
オーロラ傷の出現の可能性があるので非常に怖いのですが、パーフェクト磨きをご選択いただいている場合は、余裕綽々でご確認いただけます!
又お引き取りの際には、今後の管理方法についても話題となりましたが、前述しているように今までは洗車はご自身で手洗いされるけれども、拭き上げはしたことが無い・・・
これだけは絶対改善しなくてはだめですね!
ということで、今後は極力拭き上げは実行!
時間が無い場合はせめて走り飛ばしは実行してくれるそうです。
あとは車庫。
奥様の趣味で庭は植木に覆い尽くされているので、離れた場所に車庫を立てることも検討していただけるそうです。
御願いだからそうしてください!
今回施行させていただいたコーティングは、
“マーベラスフィニッシュ・プレミアム ヴァンキッシュ ガラスコーティング”です。
弊社での輸入車定番コーティングとして定着してきました!
今まで何回か、このコーティング剤の特徴としてトップコートとしてレジン被膜がセットされていることをお伝えし、そのため初期成膜時の不安定期間を守ることが出来るので、
“水染み付着トラブルや傷入れのリスク回避ができる”とのメリットをご紹介してきましたが、今回ばかりはちょっと、いやかなり不安・・・
今までと同じ管理をされてしまえば、
いかに高性能・高耐久といえども施工前のようにならない保証はありません。
コーティングはいかにいいものでも“魔法ではありません”から、
極端な悪条件・不良管理ではその性能は発揮できません。
今回はきちんと管理お願いいたします!
お帰りの際には、新たな施工のご依頼まで頂いてしまいました。
10月に奥様のお車、G63AMGがご納車となるそうで、
「ヤナセまで取りに行って施工してください!」
と、このような素敵なお車を施工させていただけることとなりました。
ご予約ありがとうございます。
このたびは、正直どこまで復活させれるか不安でしたが、私自身想像以上の出来栄えになったと非常に満足しております。
この施工は、今までとは違った施工方法を取り入れた結果ここまでの回復が可能だったと思います。
とてもいい勉強をさせていただきました!
その意味も含め、このたびは大変な高額施行にも拘らず、ご依頼いただきましてありがとうございました。
奥様のお車も一生懸命施工させていただきます。
車輛クラス:クラスX-2
施工コース:
コーティング施工=マーベラスフィニッシュ・プレミアム ヴァンキッシュ ガラスコーティング
磨きコース=03パーフェクト磨きコース(3パネル×鏡面究極磨き)+02プラス・パーフェクト磨きコース(傷取り究極磨き)
オプション施行=スケールリムーバー(ボデイ水染み除去)
オプション購入施工=ポルシェ純正タッチペン(施工料無料)
施工料金:342.467円税込(濃色車割増磨きランク1+15%・輸入車割増磨き+10% 適応)
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